インテル® Fortran コンパイラー XE 13.1 ユーザー・リファレンス・ガイド
インテル® コンパイラーの自動並列化機能は、入力プログラムのシリアル部分を同等のマルチスレッド・コードに自動的に変換します。自動並列化機能は、ワークシェア候補のループを特定し、正しい並列実行を確認するためにデータフロー解析を行います。また、OpenMP* 宣言子のプログラミングに必要な場合には、スレッドコード生成のデータをパーティショニングします。OpenMP* と自動並列化機能では、マルチプロセッサー・システム、デュアルコア・プロセッサー・システム上の共有メモリーによるパフォーマンス・ゲインも実現します。
自動パラレライザーは、アプリケーション・ソース・コード中のループのデータフローを解析して、安全かつ効率的に並列実行可能なループに対するマルチスレッド・コードを生成します。
これにより、対称型マルチプロセッサー (SMP) システムの並列アーキテクチャーを活用できます。
インテル® コンパイラーのガイド付き自動並列化機能は、並列化を行える可能性のあるシリアルコードの部分を見つけるのに役立ちます。-guide (Linux*) または /Qguide (Windows*) コンパイラー・オプションを使用して、並列化、ベクトル化、データ変換に関するアドバイスを得られます。
自動並列化は、次のような開発者の負担を軽減します。
ワークシェア候補であるループを見つける。
正しい並列実行を確認するためにデータフロー解析を行う。
OpenMP* 宣言子のプログラミングに必要な場合、スレッドコード生成のデータをパーティショニングする。
並列ランタイムコードは、ループの反復修正、スレッド・スケジューリング、および同期化の詳細を処理するような、OpenMP* と同じランタイム機能を提供します。-par-runtime-control (Linux*) または /Qpar-runtime-control (Windows*) コンパイラー・オプションを使用して、シンボリック・ループ境界のあるループのランタイムチェックを実行するコードを生成できます。 ループは、ループ粒度が並列化しきい値より高い場合、並列実行されます。並列化しきい値は、-par-threshold (Linux*) または /Qpar-threshold (Windows*) コンパイラー・オプションを使用して設定できます。これは、並列実行が効果的である可能性に基づいてループの自動並列化のしきい値を設定します。
OpenMP* 宣言子はシリアル・アプリケーションを素早く並列アプリケーションに変換できますが、開発者は、並列処理を含み、適切なコンパイラー宣言子を追加するアプリケーション・コードの特定部分を明示的に識別する必要があります。-parallel (Linux* および OS X*) または /Qparallel (Windows*) オプションで起動された自動並列化は、並列処理を含むループ構造を自動的に識別します。コンパイル中、コンパイラーは、並列処理のためにコードシーケンスを別々のスレッドに自動的に分割しようと試みます。ほかに開発者にかかる負荷はありません。
Linux* または OS X* システムで、自動並列化を使用するプログラムを実行するには、プログラムをコンパイルおよびリンクする際に、-parallel コンパイラー・オプションを含める必要があります。
このオプションを使用すると、互換マイクロプロセッサーおよびインテル製マイクロプロセッサーの両方で並列化が有効になります。実行ファイルでは、互換マイクロプロセッサーよりもインテル製マイクロプロセッサーにおいてより優れたパフォーマンスが得られる可能性があります。また、並列化は、/arch や /Qx (Windows*) または -m や -x (Linux* および OS X*) などの特定のオプションによる影響を受けます。
シリアルコードは分割できるので、コードを複数のスレッドで同時に実行することができます。例えば、次のようなシリアルコードの例を考えてみます。
例 1: オリジナルのシリアルコード |
---|
subroutine ser(a, b, c) integer, dimension(100) :: a, b, c do i=1,100 a(i) = a(i) + b(i) * c(i) enddo end subroutine ser |
次の例は、2 つのスレッドで同時に実行できるように、前の例で示したループの反復空間を分割する方法を示しています。
例 2: 変換された並列コード |
---|
subroutine par(a, b, c) integer, dimension(100) :: a, b, c ! Thread 1 do i=1,50 a(i) = a(i) + b(i) * c(i) enddo ! Thread 2 do i=51,100 a(i) = a(i) + b(i) * c(i) enddo end subroutine par |
ベクトル化の自動処理機能は、並列で実行できるプログラム内の演算を検出し、シーケンシャル・プログラムをデータ型に応じて、2、4、8、または 16 までの要素を 1 つの演算で処理するように変換します。場合によっては、自動並列化とベクトル化を組み合わせて最良のパフォーマンスを得ることができます。下記のコードでは、スレッドレベルの並列処理は最外ループで、命令レベルの並列処理は最内ループで使用できます。
-vec (Linux*) または /Qvec (Windows*) オプションを使用すると、インテル製マイクロプロセッサーおよび互換マイクロプロセッサーにおいて、デフォルトの最適化レベルでベクトル化が有効になります。ベクトル化により呼び出されるライブラリー・ルーチンは、互換マイクロプロセッサーよりもインテル製マイクロプロセッサーにおいてより優れたパフォーマンスが得られる可能性があります。また、ベクトル化は、/arch や /Qx (Windows*) または -m や -x (Linux* および OS X*) などの特定のオプションによる影響を受けます。
例 |
---|
DO I = 1, 100 ! Execute groups of iterations in different hreads (TLP) DO J = 1, 32 ! Execute in SIMD style with multimedia extension (ILP) A(J,I) = A(J,I) + 1 ENDDO ENDDO |
OpenMP* 宣言子を各自のコードに追加するだけの簡単な処理で、開発者はシーケンシャル・プログラムを並列プログラムに変換できます。次に、コード内の OpenMP* 宣言子の例を示します。OpenMP* を使用するオプションは、インテル製マイクロプロセッサーおよび互換マイクロプロセッサーの両方で利用可能ですが、両者では結果が異なります。両者の結果が異なる可能性のある OpenMP* 構造および機能の主なリストは次のとおりです: ロック (内部的なものおよびユーザーが利用可能なもの)、SINGLE 構造、バリア (暗黙的および明示的)、並列ループ・スケジューリング、リダクション、メモリーの割り当て、スレッド・アフィニティー、バインド。
インテル® コンパイラーは、互換マイクロプロセッサー向けには、インテル製マイクロプロセッサー向けと同等レベルの最適化が行われない可能性があります。これには、インテル® ストリーミング SIMD 拡張命令 2 (インテル® SSE2)、インテル® ストリーミング SIMD 拡張命令 3 (インテル® SSE3)、ストリーミング SIMD 拡張命令 3 補足命令 (SSSE3) 命令セットに関連する最適化およびその他の最適化が含まれます。インテルでは、インテル製ではないマイクロプロセッサーに対して、最適化の提供、機能、効果を保証していません。本製品のマイクロプロセッサー固有の最適化は、インテル製マイクロプロセッサーでの使用を目的としています。インテル® マイクロアーキテクチャーに非固有の特定の最適化は、インテル製マイクロプロセッサー向けに予約されています。この注意事項の適用対象である特定の命令セットの詳細は、該当する製品のユーザー・リファレンス・ガイドを参照してください。 改訂 #20110804 |