インテル® C++ コンパイラー 16.0 ユーザー・リファレンス・ガイド
このトピックは、インテル® グラフィックス・テクノロジーをターゲットとする IA-32 およびインテル® 64 アーキテクチャーにのみ適用されます。
インテル® グラフィックス・テクノロジー対応のインテル® プロセッサーの多くのモデルでは、並列化可能なかなりの作業をオフロードできます。コンパイルする場合、インテル® C++ コンパイラーを利用すると、CPU 向けに記述されている既存のスカラーまたは並列 C/C++ コードを、容易にプロセッサー・グラフィックスへオフロードできます。多くの場合、このオフロードはわずかなコードを追加するだけで済みます。
次の表に、プロセッサー・グラフィックスへのオフロードをサポートしているアーキテクチャーと OS の組み合わせを示します。
ビルド |
インテル® グラフィックス・テクノロジー対応プロセッサーでの実行 |
---|---|
インテル® 64、Linux* |
インテル® 64、Linux* |
インテル® 64、Windows* |
インテル® 64、Windows* IA-32、Windows* |
IA-32、Windows* |
IA-32、Windows* |
プロセッサー・グラフィックスに計算をオフロードするアプリケーションを実行する場合、インテル® グラフィックス・テクノロジー対応のインテル® プロセッサーに加えて、必要なランタイムサポートを提供するインテル® HD グラフィックス・ドライバーがインストールされていなければなりません。
インテル® コンパイラーでは、インテル® グラフィックス・テクノロジーで実行するターゲットコードを個別にコンパイルおよびリンクできます。また、オープンソースの binutils パッケージにより、ターゲットカーネルのリンクをサポートするリンカーが提供されています。詳細は、リリースノートを参照してください。
コンパイラーは、CPU (ホスト) でネイティブ実行するコード領域と、プロセッサー・グラフィックス (ターゲット) へオフロードするコード領域を生成します。オフロードランタイムは、ターゲットへのオフロード処理に使用されるランタイム・ライブラリーを参照します。
コンパイラーとオフロードランタイムは、次の操作を可能にします。
オフロードプロセスおよび CPU とターゲット間のデータ交換
ターゲットの動的検出と、ターゲットが利用できない場合にホストによるバックアップ実行
さらに、次の操作を簡単に行えるようにします。
オフロードされたヘテロジニアス・ソースコードのホストによるデバッグ
同じソースコードをインテル® プロセッサーまたはインテル® メニー・インテグレーテッド・コア (インテル® MIC) アーキテクチャー・ベースのコプロセッサーで効率良く実行できるように移植
インテル® グラフィックス・テクノロジー向けのオフロード拡張を含むソースファイルをコンパイルする場合、生成されるオブジェクト・ファイルにターゲット・オブジェクトが組込まれます。このオブジェクト・ファイルは fat オブジェクトと呼ばれます。ターゲット・オブジェクトのセクション名は .gfxobj です。FAT オブジェクトをリンクする場合、ターゲット実行ファイルは次のようになります。
.gfx bin (Windows*) という名前のセクションがホスト実行ファイルに組込まれます。
__gfx_offload_target_image (Linux*) という名前のオブジェクトが読み取り専用データセクションに配置されます。
ターゲット・オブジェクトまたはターゲット実行ファイルは、offload_extract ツールを使用して FAT オブジェクトまたは FAT 実行ファイルから抽出できます。
コンパイラーには、インテル® グラフィックス・テクノロジー向けのプログラミング用に、次の言語拡張が用意されています。
名前 |
説明 |
---|---|
offload プラグマ offload_attribute プラグマ |
CPU とプロセッサー・グラフィックス間のデータ転送を制御するプラグマ。 |
__GFX__ マクロ __INTEL_OFFLOAD マクロ |
インテル® グラフィックス・テクノロジー向けのプログラミングで利用できる事前定義済みマクロ。 |
target(gfx) 属性 target(gfx_kernel) 属性 |
変数と関数をターゲット上に配置する属性。 |
組込み関数とビルトイン関数 |
インテル® グラフィックス・テクノロジー向けヘテロジニアス・プログラミング用のビルトイン関数および多数の既存の CPU 用の組込み関数。 |
非同期オフロード API |
キューに追加されたユーザー定義のカーネル関数のオフロード、および CPU とプロセッサー・グラフィックス間のデータ共有を制御する関数。 |
さらに、インテル® Cilk™ Plus の _Cilk_for ループや配列表記を使用して、インテル® グラフィックス・テクノロジーへ並列ループをオフロードできます。
CPU とプロセッサーグラフィック間でメモリーを共有するモードは 2 つあります。
デフォルトのプログラミング・モデル: CPU とプロセッサー・グラフィック間で物理メモリーを共有できます。仮想メモリーは共有できません。
共有仮想メモリー (SVM): CPU とプロセッサー・ブラフィックス間で仮想アドレス空間を共有できます。
共有仮想メモリーに関するセクションに、SVM モードを使用する場合のプログラミングの相違点の説明があります。
コンパイラーには、インテル® グラフィックス・テクノロジー用のバイナリーをビルドする際に使用できる、次のコンパイラー・オプションと環境変数が用意されています。
コンパイラー・オプション |
説明 |
---|---|
qoffload、Qoffload |
オフロードのモードを指定します。このオプションの否定形は、オフロード言語構造を無視します。 |
qoffload-attribute-target、Qoffload-attribute-target |
ソースファイル中のすべてのグローバルルーチンとグローバル・データ・オブジェクトにオフロード属性 target(gfx) のフラグを付けます。 |
qoffload-option、Qoffload-option |
指定したターゲットとツールで使うオプションを指定します。 |
qoffload-arch、Qoffload-arch |
オフロードコードのターゲット・アーキテクチャーを指定します。 |
mgpu-asm-dump、Qgpu-asm-dump |
オフロードするプロセッサー・グラフィックス用コードのネイティブ・アセンブリー・リストを生成します。 |
mgpu-arch、Qgpu-arch |
特定のグラフィックス・プロセッサーで実行するグラフィックス用のオフロードコードをビルドします。 |
インテル® グラフィックス・テクノロジーで利用可能な環境変数の一部を以下に示します。
環境変数 |
説明 |
---|---|
GFX_CPU_BACKUP |
ターゲットが利用できない場合、ホスト上でヘテロジニアス・コードを実行するかどうかを制御します。 |
GFX_MAX_THREAD_COUNT |
ループの入れ子を並列化する際のターゲットスレッドの最大数を制御します。 |
GFX_OFFLOAD_TIMEOUT |
オフロードタスクの実行時間を制御します。 |
GFX_SHOW_TIME |
実行の最後にタイミング情報を出力するかどうかを制御します。 |