インテル® C++ コンパイラー 18.0 デベロッパー・ガイドおよびリファレンス
インテル® Cilk™ Plus は古い機能 (非推奨) です。代わりに、OpenMP* またはインテル® TBB を使用してください。詳細は、「インテル® Cilk™ Plus の代わりに OpenMP* またはインテル® TBB を使用するためのアプリケーションの移行」を参照してください。
データ競合は、並列プログラムの問題の主な原因です。
決定性競合は、2 つの並列ストランドが同じメモリー位置にアクセスし、そのどちらかが書き込み操作を行うと発生します。プログラムの結果は、どちらのストランドが "競争に勝ち"、先にメモリーにアクセスするかによって異なります。
データ競合は、決定性競合の特殊なケースです。データ競合は、共通のロックを保持していない 2 つの並列ストランドが同じメモリー位置にアクセスし、そのどちらかが書き込み操作を行うと発生します。プログラムの結果は、どちらのストランドが "競争に勝ち"、先にメモリーにアクセスするかによって異なります。
並列アクセスがロックによって保護されている場合、データ競合は発生しません。ただし、ロックを使用するプログラムでは、決定性のある結果が得られないことがあります。ロックは、データ構造を保護して更新時に中間ステートから見えないようにすることで一貫性を保証しますが、決定性のある結果は保証しません。
例えば、次のようなプログラムについて考えてみます。
int a = 2; // 複数のスレッドがアクセス可能な変数を宣言 void Strand1() { a = 1; } int Strand2() { return a; } void Strand3() { a = 2; } int main() { int result; cilk_spawn Strand1(); result = cilk_spawn Strand2(); cilk_spawn Strand3(); cilk_sync; std::cout << "a = " << a << ", result = " << result << std:endl; }
Strand1()、Strand2()、Strand3() は並列で実行される可能性があるため、a と result の最終値は実行順序によって異なります。
Strand1() は Strand2() が a の値を読み取る前または後に書き込みを行う可能性があり、そのため Strand1() と Strand2() の間には読み取り/書き込み競合が存在します。
Strand3() は Strand1() が a の値を書き込む前または後に書き込みを行う可能性があり、そのため Strand3() と Strand1() の間には書き込み/書き込み競合が存在します。
データ競合によっては、害のないものもあります。つまり、競合が存在していても、プログラムの出力に影響しない場合があります。
次の簡単な例について考えてみます。
bool bFlag = false; cilk_for (int i=0; i<N; ++i) { if (some_condition()) bFlag = true; } if (bFlag) do_something();
このプログラムには、bFlag 変数に書き込み/書き込み競合があります。ただし、すべての書き込み操作は同じ値 (true) を書き込み、cilk_for ループの終了時に暗黙的に cilk_sync が行われるまで読み取り操作は行われません。
そのため、このデータ競合はプログラムの結果に影響を与えません。どのような順序でループの反復が実行されても、プログラムの結果は同じになります。