インテル® C++ コンパイラー 18.0 デベロッパー・ガイドおよびリファレンス

インテル® C++ クラス・ライブラリー

インテル® C++ クラス・ライブラリーを使用すると、SIMD (Single-Instruction, Multiple-Data) 演算を実行できます。SIMD 演算の原理は、マイクロプロセッサー・アーキテクチャーを並列処理に活用することです。並列処理を使用すると、より少ないクロックサイクル数で、より高いデータ・スループットが得られます。その目的は、オーディオ、ビデオ、グラフィックなど複雑で大量の計算を必要とするデータ・ビット・ストリームの処理効率を高めることです。

ハードウェアとソフトウェアの要件

インテル® C++ クラス・ライブラリーとは、各種インテル® プロセッサーで使用できるすべての拡張命令にあるいくつかの関数群のことです。

各命令セットを使用するインテル® プロセッサーについては、https://software.intel.com/en-us/articles/performance-tools-for-software-developers-intel-compiler-options-for-sse-generation-and-processor-specific-optimizations/ (英語) を参照してください。

ライブラリーの詳細

SIMD 演算用のインテル® C++ クラス・ライブラリーは、各種プロセッサー用の基本命令を利用するための便利なインターフェイスとなります。プロセッサー命令のこのような拡張機能によって、SIMD (single instruction-multiple data) 手法を用いた並列処理が可能になります。次の図は、SIMD のデータフローを示しています。

SIMD のデータフロー



特にこの命令では、命令 1 つで演算が 4 回実行できるため、効率が 4 倍改善されます。

このような新しいプロセッサー命令は、インライン・アセンブリー、組込み関数、または C++ SIMD クラスのいずれを使用しても実装できます。その 3 種類のインターフェイスについて、32 ビット浮動小数点値を 4 つ加算するのに必要なコーディングを比較してみてください。

インライン・アセンブリー、組込み関数、クラス・ライブラリーの比較

インライン・アセンブリー

組込み関数

SIMD クラス・ライブラリー

...__m128 a,b,c; __asm{ movaps xmm0,b movaps xmm1,c addps xmm0,xmm1 movaps a, xmm0 } ...

#include <xmmintrin.h> ...__m128 a,b,c; a = _mm_add_ps(b,c); ...

#include <fvec.h> ...F32vec4 a,b,c; a = b +c; ...

この表は、単精度浮動小数点値を 4 つ加算するコードについて、インライン・アセンブリー、組込み関数、および SIMD クラス・ライブラリーを用いた場合をそれぞれ示したものです。インテル® C++ SIMD クラス・ライブラリーでコーディングをするのがいかに簡単かが分かります。キー入力の数が減り、コードの行数が減るだけでなく、表記についても C++ の標準表記と似ているため、他の手法よりも簡単に実装できます。