値の範囲で並列反復を行うテンプレート関数。
#include "tbb/parallel_for.h"
template<typename Index, typename Func> Func parallel_for( Index first, Index_type last, const Func& f [, partitioner[, task_group_context& group]] ); template<typename Index, typename Func> Func parallel_for( Index first, Index_type last, Index step, const Func& f [, partitioner[, task_group_context& group]] ); template<typename Range, typename Body> void parallel_for( const Range& range, const Body& body, [, partitioner[, task_group_context& group]] );
parallel_for(first,last,step,f) は、ループの並列実行を表します。
for( auto i=first; i<last; i+=step ) f(i);
インデックスは整数型でなければなりません。ループはラップアラウンドしてはなりません。step 値は正数でなければなりません。省略された場合は、暗黙的に 1 になります。反復が並列に実行される保証はありません。より小さな反復がより大きな反復を待機する場合、デッドロックが発生することがあります。引数が指定されない場合、パーティショニング手法は auto_partitioner になります。
parallel_for(range,body,partitioner) は、並列反復のより一般的な形式を提供します。range の各値について body の並列実行を表します。オプションの partitioner は、パーティショニング手法を指定します。Range 型は、Range コンセプトをモデル化しなければなりません。ボディーは、以下の表の要件をモデル化しなければなりません。
擬似署名 |
意味 |
---|---|
Body::Body( const Body& ) |
コピー・コンストラクター。 |
Body::~Body() |
デストラクター。 |
void Body::operator()( Range& range ) const |
range にボディーを適用します。 |
parallel_for は、is_divisible() が各サブ範囲で false になるポイントまで、範囲をサブ範囲に再帰的に分割して、これらの各サブ範囲についてボディーのコピーを作成します。各ボディー/サブ範囲ペアについて、Body::operator() を呼び出します。空間のオーバーヘッドを最小化してキャッシュを効率的に使用するために、呼び出しは再帰的な分割を使用して交互に配置されます。
範囲とボディーのコピーの一部は、parallel_for のリターンの後に破棄されます。この後からの破棄は典型的な使用方法では問題ありませんが、複雑な副作用がある実行トレースの検索、範囲やボディー・オブジェクトの記述を行う際には注意する必要があります。
ワーカースレッドが利用可能な場合、parallel_for は非決定性順に反復を実行します。演算精度のために特殊な実行順に依存しないでください。しかし、効率のためには、parallel_for が値の連続する順に実行することを想定してください。
ワーカースレッドが利用できない場合、parallel_for は、次のように左から右に反復を実行します。再帰分割を表すバイナリーツリーを描くことを想像してください。各ノンリーフノードは、Range の分割コンストラクターの 1 つを呼び出してサブ範囲 r を分割することを表します。左の子は、r の更新された値を表します。右の子は新しく構築されたオブジェクトを表します。ツリーの各リーフは分割できないサブ範囲を表します。Body::operator() メソッドが各リーフのサブ範囲上で、左から右に呼び出されます。
すべてのオーバーロードを task_group_context オブジェクトを渡して、アルゴリズムのタスクがこのグループで実行されるようにすることができます。デフォルトでは、アルゴリズムは自身がバインドされているグループで実行されます。
計算量
範囲とボディーが O(1) 空間を使用して範囲をほぼ等しい断片に分割する場合、空間計算量は O(P log(N)) です。ここで、N は範囲のサイズ、P はスレッド数です。
このサンプルは、input[i-1]、input[i]、および input[i+1] (1 <= i< n の場合) の平均を output[i] に設定する ParallelAverage ルーチンを定義します。
#include "tbb/parallel_for.h" #include "tbb/blocked_range.h" using namespace tbb; struct Average { const float* input; float* output; void operator()( const blocked_range<int>& range ) const { for( int i=range.begin(); i!=range.end(); ++i ) output[i] = (input[i-1]+input[i]+input[i+1])*(1/3.f); } }; // 注: input[0..n] を読み取り output[1..n-1] を書き込む void ParallelAverage( float* output, const float* input, size_t n ) { Average avg; avg.input = input; avg.output = output; parallel_for( blocked_range<int>( 1, n ), avg ); }
このサンプルはより複雑で、STL に精通している必要があります。このサンプルでは、フラットな反復空間が及ばない parallel_for の能力を示します。コードは、2 つのソートされたシーケンスの並列マージを行います。このコードはランダムアクセス・イテレーターを使用して任意のシーケンスで動作します。アルゴリズム (Akl 1987) は、次のように再帰的に動作します。
このアルゴリズムによるインテル® TBB の実装は、範囲オブジェクトを使用してほとんどのステップを行います。is_divisible はステップ 1 とステップ 2 のテストを行います。分割コンストラクターはステップ 3-6 を行います。ボディー・オブジェクトはシーケンシャル・マージを行います。
#include "tbb/parallel_for.h" #include <algorithm> using namespace tbb; template<typename Iterator> struct ParallelMergeRange { static size_t grainsize; Iterator begin1, end1; // [begin1,end1) はマージする最初のシーケンス Iterator begin2, end2; // [begin2,end2) はマージする 2 つ目のシーケンス Iterator out; // マージしたシーケンスを格納 bool empty() const {return (end1-begin1)+(end2-begin2)==0;} bool is_divisible() const { return std::min( end1-begin1, end2-begin2 ) > grainsize; } ParallelMergeRange( ParallelMergeRange& r, split ) { if( r.end1-r.begin1 < r.end2-r.begin2 ) { std::swap(r.begin1,r.begin2); std::swap(r.end1,r.end2); } Iterator m1 = r.begin1 + (r.end1-r.begin1)/2; Iterator m2 = std::lower_bound( r.begin2, r.end2, *m1 ); begin1 = m1; begin2 = m2; end1 = r.end1; end2 = r.end2; out = r.out + (m1-r.begin1) + (m2-r.begin2); r.end1 = m1; r.end2 = m2; } ParallelMergeRange( Iterator begin1_, Iterator end1_, Iterator begin2_, Iterator end2_, Iterator out_ ) : begin1(begin1_), end1(end1_), begin2(begin2_), end2(end2_), out(out_) {} }; template<typename Iterator> size_t ParallelMergeRange<Iterator>::grainsize = 1000; template<typename Iterator> struct ParallelMergeBody { void operator()( ParallelMergeRange<Iterator>& r ) const { std::merge( r.begin1, r.end1, r.begin2, r.end2, r.out ); } }; template<typename Iterator> void ParallelMerge( Iterator begin1, Iterator end1, Iterator begin2, Iterator end2, Iterator out ) { parallel_for( ParallelMergeRange<Iterator>(begin1,end1,begin2,end2,out), ParallelMergeBody<Iterator>(), simple_partitioner() ); }
アルゴリズムは多くの位置を移動するため、帯域幅が制限されることがあります。速度向上の割合は、システムによって異なります。